子どもと大人の吃音について解説!

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今回は、当相談室にお問い合わせの多い「吃音」について言語聴覚士が解説します!

吃音とは

流暢性の障害、リズムの障害と位置付けられています(DSM-5;米国精神医学会)。流暢性障害は「話し言葉の流れと速さを生む機能」とも言い換えることもできます(ICF;WHO)。

音から音への移行が途切れたり、滑らかではない特徴的な話し方のことを指します。

吃音の発症率は5%、成人の有病率は1%といわれ、比較的頻度が高いと言えるでしょう。

吃音の症状

 吃音の症状は様々な種類がありますが、代表的な症状について紹介します。

・音や語の一部の繰り返し 

 例:「ぼ、ぼ、ぼくは…」や「ぼく、ぼく、ぼくは…」など

・音の引き伸ばし

 例:「ぼーくは…」など

・阻止(ブロック)

「…(ことばが詰まって出てこない) ぼくは」など

言葉だけでなく、体の一部や顔の一部に不自然に力が入ってしまったり、運動がみられたりすること(随伴症状)も症状ととらえます。

吃音の原因

 現在、吃音の決定的な原因とされるものは未だ示されていません。しかし吃音発症に関連する遺伝子の報告や発話時の脳機能についての研究もされています。

発達性吃音

 吃音は一般的に幼児期に発症することが多いと言われています。当相談室でも「子どもが話すときにどもる、はじめの言葉をくりかえす」等の相談を保護者の方から多く受けます。このような幼児の吃音を発達性吃音と呼びます。

獲得性吃音

 心因的な要因など、何かがきっかけで発症する吃音です。幼児期に吃音がなかったにもかかわらず、心理・社会的な要因などで発症します。また失語症・運動障害性構音障害に合併する場合もあります。特に心理的要因は、直接的に症状の有無や程度に影響しますが、適切な環境面の整備などで症状が改善していく場合が多いとされています。

吃音症状が出やすい状況

 どんなときに吃音の症状は出やすいのでしょうか?チェックして対策していきましょう。

速く話そうとしたとき

 発話の速度が速いと吃音症状は出やすいと言われています。落ち着いて、ゆっくり話すと改善することがあるかもしれません。

緊張や不安を感じた時

 心理的に緊張や不安を感じると、症状は出やすいとされています。プレゼンや原稿を読むときは、事前に練習しておくなど、少しでも不安を取り除くと良いかもしれません。

のどや体に力が入っている時

 話す際にお口周りやのど、体に力が入っていると、適切に発話ができないことが多くあります。意識的にリラックスをしてみてください。また、症状が出てしまった時も無理に声を押し出そうとせず、もう一度息を吸って言い直すと改善されることがあります。

子どもの吃音

※診断名については、通常は医師/言語聴覚士が検査・評価をして診断するものです。こちらの記事はあくまでも参考としてお読みください。

 前述のように、幼児期に発症する吃音は発達性吃音と呼びます。自然治癒率が高く、65~85%の子供が自然治癒されるとされています(DSM-5;米国精神医学会より)。そのため、「自然に治るので様子を見る」対応が多くされているのですが、一方で発吃直後に自然治癒が多いという報告もあり、近年は幼児期にもただ経過をみるのではなく専門家によって適切に対応していく必要があるともされています。経過の中で、吃音が目立つ時期と目立たない時期を繰り返したり、症状の進展に伴い心理的問題も現れてきたりすることがあるので、一度言語聴覚士に診てもらうと安心でしょう。

大人の吃音

※診断名については、通常は医師/言語聴覚士が検査・評価をして診断するものです。こちらの記事はあくまでも参考としてお読みください。

 幼児期から成人までずっと吃音症状がある場合は、多くは発達性吃音といえるでしょう。中には吃音でお悩みでも、言語聴覚士による訓練を受けたことがない方もおられると思います。吃音症状には様々な種類があり、吃音の程度や頻度も個人差があります。環境調整や訓練によって少しでも楽に話せるようになるケースがありますので、お悩みの方は一度言語聴覚士のいる機関を受診されても良いかもしれません。

 幼児期に吃音がなかった方は、心理的・社会的・神経学的なきっかけで発症する獲得性吃音かもしれません。職場環境の変化や心理的なストレス等、様々なきっかけがありますが、自分一人では対応できにくいこともあるかと思います。このような場合は、専門家に相談することによって気持ちが楽になり、発話も楽になっていくケースも多いです。

吃音の治療法

 吃音の治療では、本人とその家族が吃音症状や治療ゴールについて正しい理解をもつことが重要です。個人により吃音の症状、程度、原因などは異なるため、目指せるゴールや治療目的は異なります。吃音の方からは、「治してほしい」「すらすら話せるようになりたい」という希望が強い場合もありますが、難しい場合もあります。当相談室では個人の方の病態を、詳細な問診、検査・評価にて検討し、治療に役立てていきます。少しでも「楽に話す」ことができるよう、話し方の練習をする(直接法)、症状が出現しないための工夫をする、心理的に援助するなどしています。

まとめ

吃音は、子どもから成人までお悩みの方が多いかと思います。ことばの症状だけでなく、心理的にも苦しい思いをすることが多いものですので、一人で抱えず、一度専門家である言語聴覚士に相談していただくことをお勧めします。誤った工夫を自身でしてしまうと、かえって症状を悪化させることもありますので、正しく理解し適切に対応していきましょう。当相談室でも吃音の相談・訓練を承っていますので、お気軽にお問い合わせください。

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