発音がしづらい原因と治し方 ーオンライン言語聴覚士の視点からー

発音がしづらい、治し方を知りたい、という方のために原因とオンラインでもできる検査、治療法をまとめてみました。一つ一つチェックしていきましょう。

滑舌が悪い・発音しにくい原因

滑舌が悪い、発音しにくい、話しづらいといった症状には、以下の原因が挙げられます。

ここでは、大人と子どもに分けてまとめてみました。

大人の場合

・がんの手術後

舌がんなどの口腔がんは、治療にあたって手術をすることがあります。舌や口蓋(上あご)にがんの浸潤があった場合、手術でその箇所を切除しなくてはなりません。その範囲は、部分的な切除にとどまる場合から、半分以上の切除に及ぶ場合まで様々です。切除した部位には他の器官の筋肉(前腕や腹直筋などの皮弁)を切除部分に縫い付けることで代用するのですが、術前とはお口の中の形や運動機能が異なるので、滑舌が悪くなった、発音できないことばがあるという状態が生じます。

・脳卒中の後遺症

脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの疾患の後遺症として、お口の周りの器官に麻痺がある方がいらっしゃいます。麻痺があると、思うように口唇や舌などを動かすことができず、その結果、発音しにくい・滑舌が悪いという状態が生じます。

・子どもの頃からの機能性構音障害

機能性構音障害という言葉は、特にお口の中の形や動きに問題はなく、発音だけしにくいという状態を指します。軽度ですと会話は通じるので大きな問題は生じないこともありますが、反対に重度ですと会話内容がほとんど伝わらず、コミュニケーションでとても困る状態になり、症状程度は人によって異なります。大人になってから訓練を希望される方は、子どもの頃から滑舌の悪さ、発音のしにくさはを抱えつつも特に訓練などをせず放置していた場合が多く、仕事で話す機会が多くなったこと、誰かに指摘されたことをきっかけに訓練を開始されるという場合がよく見られます。特に、俳優、舞台役者、教師・講師業などでは特に注目を浴びるので、きれいに発音できるようになりたいという方も多いでしょう。

子どもの場合

・機能性構音障害

前述したように、お口の中の形や動きには問題はないのにも関わらず発音がうまくできない状態を指します。症状としては「かきくけこが言えない」「さしすせそが言えない」「き・ぎ・し・ち・じ」などが言いにくいなど様々です。多少不自然さがあっても会話には困らない軽度例から、会話内容が伝わらずコミュニケーションに大きな影響を及ぼす重度例まで様々です。発音の問題は、発達途上における未熟構音(次第によくなっていくもの)と、訓練をしないと改善が見込まないものがありますので、気になったら一度早期に言語聴覚士に診てもらうことをお勧めします。

・口蓋裂の術後

先天的に口蓋裂をもって生まれてくる赤ちゃんがいます。お口の中の口蓋といわれる上顎部分に裂け目があり、鼻腔と口腔がつながってしまっている状態です。通常この場合は早期に手術をし、口蓋を縫合して鼻腔と口腔を分離させるのですが、発音のしにくさが残る場合があります。症状としては鼻に抜けたような声(開鼻声)や子音の歪みなどがあります。

発音の症状がある方に受けていただきたい検査

・発声発語器官の検査

 発声発語器官とは、口唇や舌など、発音をするのに必要な器官の総称です。これらの形や動きに問題がないかどうかを初めにチェックしていきます。問題がある場合は発音のしづらさとの関連を考慮したうえで訓練内容を決めていく必要があります。場合によっては、舌小帯短縮症(舌の裏にあるヒモ上の部分が短い状態)などが発見される場合もあり、訓練に先行して手術が必要なケースもあります。

・構音検査

「構音」とは「発音」の医学の専門用語です。構音検査では、色々なものの名前や文章を言っていただき、記録・分析することで状態を詳細に把握できる検査です。どのような音が出しにくく、どのような誤り方をするのか、誤り方に規則性がないか、などを診ていきます。そして、どのようなメカニズムで症状がでているのかを明らかにし、訓練の方針を導き出します。これは、言語聴覚士が専門としている検査で、言語聴覚士の在籍している医療機関でなければ通常は受けられません。

・聴力検査

文字通り聞こえの状態をチェックする検査です。健康診断などで行う簡単な聴力検査とは異なり、音の高さ(周波数)によって聴力に差がないかどうかもチェックします(標準純音聴力検査)。発音の訓練の基本は、音を聞いて同じ音を模倣して出す、というところにあるので、聴力がある程度保たれていることが必須となります。もしも聴力に問題があるとわかった場合は、補聴器を使用するなど聞こえの改善を優先して行う方が良いでしょう。

発音の症状の治し方

・構音訓練

発音は言語聴覚士との個別訓練で治していきます。正しい音を出すために必要なお口の動きを習得するために、一つ一つの動きを丁寧に練習することが大切です。定期的に訓練に通っていただくことで次第に目標の音を産生することができるようになります。地道な作業ではありますが、ことばは一生使うもので、生活に大きく関わります。特にお子さんの場合は読み書きの学習にも影響がでてきますので、早期に親子で根気よく取り組んでいくことが望ましいと言えるでしょう。

現在、当相談室ではオンラインを主軸に発音(構音)の訓練を実施しています。定期的に通院する時間がない方、仕事や家事で自宅を離れられない方、近くに言語聴覚士のいる医療機関がない方などにおすすめです。気になる症状があったら、一度お気軽にご相談ください。

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